持ち家と賃貸はどちらが得か?
日本のあるところに、アパート住まいのAさんとBさんがいました。AさんとBさんがそれぞれ現金で3000万円を持っていたとしましょう。Aさんは、その3000万円で迷わずマイホームを買いました。Bさんは、その3000万円で有価証券を買いました。AさんとBさんの違いは、資産をストック資産である不動産で持っているか、それとも流動資産である有価証券で持っているかだけで、総額は変わりません。この二人の優劣は、それぞれの資産が収益を生み出すかどうかで判断されます。これが会計の考え方です。
ここで考えなければならないのは、持ち家に住むAさんには家賃を支払う義務はありません。一方、Bさんは相変わらず家賃をあかの他人に払い続ける必要があります。「家賃は払い損ですがマイホームは自分のものになる資産」であるといわれる所以です。
仮に、Bさんが3000万円の5%の150万円ま家賃を払っているとします。月額12万5千円です。住宅ローン35年、ボーナス払いなし、当初3年間1.3%、4年目以降3.5%で3000万円を借りた場合の4年目以降の毎月の支払額が12万1千円ですから妥当な金額です。
とにかく、Bさんは自分のものになるわけでもないのに、あかの他人である大家さんに年間150万円も支払わなければなりません。これがマイホーム購入に繋がる第一の理由です。
しかし、よくよく考えてみるとAさん自身も自分で自分に家賃を払っている事になります。家賃を自分に払うのと、他人に払うのは大きな違いのように思われる方がほとんどでしょう。しかし、経済や会計の世界ではまったく同じ扱いになります。
なんか頭がこんがらがってきましたか?
次のように考えると分かりやすいと思います。
Aさんは、3000万円でマイホームを買ったにもかかわらず、運悪く転勤が決まり、泣く泣く他人に貸さなければなりませんでした。その時の家賃はBさんと同じ年間150万円です。このような場合、Aさんの所有する不動産は年間150万円稼ぐのですから、年率5%の利益を生むことになります。
しかし、Aさんは自分で住みたいために、この転勤命令を無視したとします。自分で自分の家に住む事になった場合、年間150万円の収入を得る機会を逃した事になります。どちらの場合も不動産自体の価値には違いはありません。ですから、Aさんは自分で自分の家に住む場合、手にできていたはずの現金が手元に残らないだけです。これを消費といい、自分で自分に家賃を払っているのと同じことになります。
一方、Bさんはどうでしょう。
Bさんも年間150万円の家賃を払っています。しかし、Bさんには3000万円の有価証券があります。仮に、その有価証券が年間5%のパフォーマンスを上げれば、支払い家賃額はトントンになります。仮に10%のパフォーマンスを上げれれば、家賃150万円を支払った後に5%の150万円という現金が手元に残ります。ただし、有価証券からのパフォーマンスが5%を下回れば当然赤字になり、支払い家賃150万円に足らない分は自らの他の収入から補填しなければなりません。
ここまで読むと多くの方はこう言うでしょう。
「不動産は値上りするかも知れない」と・・・?
また次のように言われる人もいるでしょう。
「不動産が値上りゼロでも確実な5%の利回りは捨てがたいぞ!」と・・・?
これを理解できる考え方が、「売却益(キャピタルゲイン)」と「継続収入(インカムゲイン)」という考え方です。
不動産には「売却益もあがれば住むという(自分が自分に家賃を払うが実際には現金の受渡しがない)二つの利益がある」ということになります。
しかし、Bさんも同じです。Bさんの有価証券には持ち続ける事によって発生する配当などがあり、「売却益もあれば配当と言う持ち続ける事で発生する継続収入」もあります。
いずれにしても、この段階ではどちらが良いのかは全く判断できません。
「じれったいなぁ~。はやく確信を話せよ!」
あなたの声が聞こえてきそうです。
確信を言いましょう。
現金3000万円を持ち家に変えてしまったAさんの問題点の一番目は、「不動産は保有するだけでコストがかかる!」ということです。もうすでにご存知のことだと思いますが、不動産には固定資産税や都市計画税などの税金の他、区分所有のマンションであれば管理費や修繕積立金などの保有する為のコストがかかります。一方、Bさんが持っている有価証券の場合、ほとんど保有コストはかかりません。持ち続けているだけでお金が目減りするということはないのです。
二番目は、取得するためのコストです。
現在、有価証券の取得コストはネット証券が現れたあたりから劇的に下がり続けています。おそらく、取得コストの0.5%ぐらいが平均でしょう。Bさんは3000万円の有価証券を買ったのですから、その取得費用は高くても15万円です。
一方、3000万円を不動産を買ったAさんは、不動産業者に支払う手数料は最大で3000万円×3%+6万円の96万円です。これに税金である不動産取得税や登録免許税、登記費用がかかります。さらにそれだけではありません。建物部分の価格の消費税も必要になります(土地は非課税)。これら全てを合わせると、取得金額の6%~7%もの取得コストがかかります。Aさんの場合ですと、安くて180万円、高くて210万円もの取得コストが必要です。
三番目は、売却コストです。
不動産に関する日本の税制は複雑怪奇です。カンタンに言うと、不動産を売却したときに発生する譲渡益課税というものは、他の所得と合算しない分離課税方式です。5年以上の長期間保有していた不動産を売却した場合で譲渡益の15%です。5年以内の短期間の場合で20%です。これに5%程度の住民税が別途かかります。ですから、20%~25%もの売却コストがかかります。
一方、有価証券の場合はどうでしょう。株式の売却益の場合、申告分離課税の場合で20%、源泉分離課税で1.05%、有価証券が債権の場合は0%です。
以上のように不動産の売却益(キャピタルゲイン)に対する課税は、有価証券と比べて明らかに厳しいといえます。
四番目は、不動産が建物の場合、買ったとたんに目減りする事です。
不動産と言えば土地と建物です。土地は値段の上がり下がりはあるものの、決して朽ちません。しかし、建物の場合は朽ち果てていき、いずれ価値がなくなります。例えば、Aさんの場合、3000万円のうち1500万円が土地、残りの1500万円が建物であったと仮定すると、30年後には建物が0円になったとすると年間50万円ずつ目減りしている事になります。
さらに、一歩も足を踏み入れてないにもかかわらず、登記をしただけで10%以上下がってしまいます。
以上のように不動産は保有していくだけで資産価値が目減りしするのです。
このように不動産は「取得コスト」、「保有コスト」、「売却コスト」、「時間とともに目減りしていく」、「換金性が悪い」など、全てにわたって株式や債券などと比べてはるかにコストが高いのです。
逆に言えば、終戦からバブル崩壊の1990年まではこれらの保有コストを吸収できるだけの土地の値上りがあったわけです。ですから、とにかく土地にさえ変えておけばなんとかなったのが土地神話の時代であり、あれから20年も経っているにもかかわらず、同じような考え方で不動産を取得する事は危険だと言えるでしょう。もっというなら、売却益(キャピタルゲイン)が期待できないのであれば、不動産を取得しない方が賢明だと言えます。マイホームを買うにしても同じです。夢見るあまり、自分の実力以上の不動産を手に入れようとする人がマダマダ多いのが現実ですが、人生を踏み外さない為にもそこそこの不動産にしておくべきです。また、良好なトン対物件があるのであれば、そのような賃貸物件に住みながら有価証券で継続収入を組み立てる方が、よほど自由ですし、人生の選択肢が増えるような気がします。
ところが、このようなことを誰も言いません。また、不動産関係の本にも書かれていません。やはり、戦後、日本を席巻し続けてきた「土地神話」は生きているのでしょうか?それとも、「自分だけ良ければ病」の人たちが多すぎるのでしょうか?
不動産購入を考えている人は、是非、一度、このように考えてみるべきだと言えるでしょう。
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